へいぼん田舎女の、あれこれ話し!

母になっても酒と多趣味を諦めない

勝手に本をお薦めする話し

はじめに

文章を読むことが好きです。色んな方のブログを拝読するのも特に好き。このアカウントは、記録や振り返りをメインに書いていきたいなと思い作成しましたが、何も書かない書けないまま、早1ヶ月が経とうとしておりました。女子高時代以来のブログです。当時の内容は、放課後や楽しみな遊びの予定などについて、話し言葉や方言の文章を勢いのまま並べ、(例文:「明日から夏休みばってんみんな何す〜?だいか海でBBQせん〜?☆彡」明日から夏休みだけど皆んなは何する?誰かBBQしない?という意味)そこへいかにさりげなく、盛れたプリクラを添付しておくかに重きを置いていました(笑)

現在は、夫と、生後5ヶ月の0歳児と3人暮らし。0歳児と24時間を共に過ごしている身なので、幸せな出来ごと、鬱憤なども含めて、育休中のあれこれを残していけたらなと思います。

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とは言っても、連日この酷暑。数週間前までの雨降りは、外出欲を低下させましたが、この危険な暑さも同様!また家の中にこもる日々です。最近設置したベビーサークルの中で、ふたりで遊ぶ時間が日中の大半を占め、子どもが寝たタイミングに、家事や趣味の読書をする。読書はとっても好きです。外出欲の低下は、読書欲を倍増させます。思えば、楽しい時も、現実に疲れた日も、恋をしても、していないあいだも、あらゆる本に癒され救われてきました。今回は、誰の目にもとまらないかもしれませんが、本の話しをしようと思います。目にとめてくれたあなたは、田舎で育休中の、本好き女の長いひとりごとを、気軽に読んで頂けたらありがたいです。

記憶している最初の小説

幼い頃は、漫画は好きだけど、小説には全く興味のない子どもでした。初めて小説を読み終えたのは、小学校4年生の時。アンネの日記でした。世界中で翻訳され、第二次世界大戦ユダヤ人差別の悲しい現実を、少女アンネの視点で書いた長編です。小説に興味のなかった子どもは、この長い長い話しを、机の上で夢中になって読みました。そして、実際に起きた悲惨な記録に涙が止まりませんでした。読み終えたあとは、いっとき茫然としていましたが、この本のことを何かに書きたいという思いが芽生えました。そこで私は初めて、夏休みの読書感想文を宿題としてではなく、真摯に取り組んだのでした。 

クリスマスプレゼントにもらった本

小学校5年生か6年生の時のクリスマスプレゼントに、母から「マルベリーボーイズ」という小説を贈られました。貰った当初は、自分で選びたかったと嘆いていましたが、母が選んでくれたのだからまずは読んでみることに。すると、まんまと、この小説に熱中したのです。物語は、ユダヤ系イタリア人の少年が、ひとりぼっちでニューヨークに渡ることになり、逆境に立ち向かい生きていく話しです。小学校高学年から読める内容で、文体も難しくはありません。引っ越す時、私は色んな本を手放したのですが、この本はいまでも、私の本棚に立てられています。いま再読したら、また違う発見があるんじゃないかとも思うし、今度は、贈る側にもなりたいなぁという気持ちも、ぼんやりとあります。

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秀美くん

高校は女子校に通っていました。相変わらず漫画は好きで、新たにアニメにはまりました。この時期に、気の置けない女友達たちと、二次創作や、男同士の恋愛モノ、pixivというサイトにのめり込んでいきます。そこでの沼があまりにも深く、読書は時々でした。好きな作家は特におらず、文豪と呼ばれる人達の小説をちまちまと読んでおりました。ある日、母と寄った書店で、気になるタイトルの文庫本を見つけました。その本を手に取り、試し読みしているうちに続きが気になって仕方なくなり、購入することにしたのが「ぼくは勉強ができない」というベストセラーです。

著者は、かの有名な山田詠美。この、山田詠美さんの作品との出会いは、まだ少女であり、もう女でもあったひとりの10代読者に、特別な影響をもたらしたのでした。好きだったティーン誌にも載っていない作法を、秀美くんや桃子さんから学んだ私は、実践したくてたまりません。20歳を迎え、堂々とお酒が飲めるようになってからその作法(?)を取り入れるようになり、1人で見知らぬバーに入ってみたり(でもそこは田舎のガラの悪いバーだった…)敢えてピアスホールを開けずに、手間取りながら大きいイヤリングをつけたり、石鹸の香りなんて断固反対!と、よく使っていたJomaloneの中でも特に強い、ピオニー&ブラッシュスエードを堂々と纏ったりしていました。いまはドレッサーの隅に立っているピオニーのコロンですが、この香りを嗅げば、あの頃の記憶が呼び覚まされるでしょう。Jomaloneには、もうひとつお気に入りがあります。ウッドセージ&シーソルト。これはまさに、夏につけるべきコロンです。夕方の海の香りがして、せつなさに思わず目を閉じてしまいますよ。こちらはいまも好んでつけています。

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ぼくは勉強ができないが、初めて世に出たのは、1991年の5月だそうです。あれから何十年と経った令和の今も、主人公の時田秀美くんは、愛すべき男子のまま。現在アラサーの私からみても、ドキッとさせられるたたずまいです。共学であった中学の頃に、こんな気取らない人気者が教室に居たら、間違いなく好意を寄せていたと思う。秀美くん自身は、ませようとも、大人ぶろうともしていないのに、欲望のまま生きる母と祖父に育てられたからこそ漂う無頓着な若い色気が、きっとあるんでしょうね。物語の中で彼は、クラス内の狭いコミュニティで起きがちな、いや〜な暗黙の了解に従わない姿勢をみせます。これについて「正義感が強い!」なんて感心されても彼はきっと嬉しくないでしょう。物の分かった男の子なんですよね〜…。勉強は出来ないみたいですが、女にはよくもてているしさ!(これで‟勉強も”出来たら最強の男子だよな)

敬愛する小説家、山田詠美さん

小説家、山田詠美の綴る文章には無限の可能性がある。偏らない価値観は、読者の中にするすると入り込んできて、そんな物語の登場人物ひとりひとりが愛おしくなってくる。さらに、思わず溜め息が漏れるほどの美しい比喩たち。「比喩は作家の発明」と、詠美さんは以前仰っておりましたが、これが凄く印象的だったんです。この短い言葉さえも、詠美さんが生み出したのだからプロですよね。さすが、芥川賞選考員という重役を務めているだけある。それからの私は、詠美さんの長編、短編、エッセイを探して買い、沢山読みました。10代後半から20代前半のうちは、「ベットタイムアイズ」「蝶々の纏足」「A2Z」を読み終えたあとなんかに、また一つ所作を覚えたぞとニヤニヤしておりましたが、大人になって分かったよ。詠美さんの小説はやっぱりいい意味でずるい。心を全部持っていっちゃうんですもん。A2Zは、編集者の主人公、澤野夏美が、同業の夫から恋人の存在を打ち明けられます。夏美は驚きますが、そんな彼女にも、気になる歳下の男『成生』がいて。やがて2人は恋人同士になります。あれ…?これって俗に言う「不倫」関係じゃない…?とハラハラする設定なのですが、この小説には、そんなスリリングさはなく、ワイドショーが好む不道徳さも匂わせない。あるのは、恋に真っ最中の男女の真剣さのみ。目の前の相手に夢中な時の、夏美と成生の会話なんかは羨ましいほど熟練者です。私にとってこのA2Zという小説は、手のひらサイズの宝物となりました。数多くある詠美さんの作品の中でも、特に好きな1冊として挙げます。

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余談ですが、詠美さんの小説に出てくる男の子たち、A2Zの『成生(なるお)』もですが、ジェントルマンの『夢生(ゆめお)』や、蝶々の纏足の『麦生(むぎお)』といった彼らは、名前が似ているんです。『時田秀美』も、著者の『山田詠美』と、漢字は2文字しか変わらない。後者は故意か分かりませんが、そういう細工と重なって、さらに作品を楽しめるんですよね…。

「私のことだま漂流記」という本について

2ヶ月程前に、山田詠美さん初の自伝小説「私のことだま漂流記」を読み終えました。

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凄い、凄いわ、この方は…と圧倒されながら読んでいたのですが、具体的に何が凄いかというと、詠美さんは、自分や周りに起きた出来事や交わした会話、そのときの感情を、鮮明に覚えておいて楽しんでおられる。記憶力が良いのとはまた違う。それが事件であっても、他愛のないことであっても、少なからず自分に影響を及ぼした時のこと、忘れてやるもんかという、強い意志から成り立っている気がします。そういうものたちをひとつひとつ記憶の引き出しの中に入れて、熟成させ、いつでも取り出せるようにしておく。取り出した後の使い道は、原稿用紙の上。(詠美さんはずっと手書きの原稿!)この自伝小説には、詠美さんの子ども時代のことが、細かく書いてあります。内容はこちらに書けませんが、この自伝小説を読みながら、ファンとして嬉しい気付きが所々ありました。これは、思ってもみなかった供給!と、昂るオタクの顔をしながら、あのときの短編は、詠美さん自身の体験からだったのだなぁ、とか。新人文学賞を受賞されたデビュー作の「ベッドタイムアイズ」を書き出すまでの道のりとか。思わず微笑んでしまうようなユニークなエピソードもありながら、愛した音楽や、小説、GIとの過去話しなども真摯に語られている。小説家・山田詠美を作り上げたのは、これら全てだったんだと圧倒されました。

エイミーの影響

私は、作品のファンでありながら、詠美さんのパーソナルな部分も大好きです。エイミーの独特な言葉で綴られるエッセイには、自分が男だったらこんな女敵わない!と思わずにはいられない素敵なバッドガールっぷりが詰め込まれている。ここだけの話、最近自分では聴いてこなかったソウルミュージックをかけたり、彼女が好んだ海外文学に触れてみたりしています。しているんだけど、もちろん、彼女のようには長けていないし、サマにもならない。そんなことは分かっているけれど、敬愛する誰かを通して、自分の知らない世界に足を踏み入れてみることに、遅過ぎるなんて無いのだなと思います。芸術も、文学も、生きる糧になる。その糧となるものはいくらあったっていいんです。いつかの文學界に掲載された、作家が選ぶ小説のコーナー(?)で、彼女は田辺聖子さんの「私的生活」を挙げておりました。それをみた私は、私的生活という本を探しに、急いで書店へ向かいました。読んだら、とにかく、よかった。あとで知ったのは、この作品が3部作となっていて、私的生活は第2作目だったということ。そんなのはどうだっていい!何度読んでも良い小説は、良い!乃里子3部作と呼ばれる「言い寄る」「私的生活」「苺をつぶしながら」の、これらは、ひと言で表すなら、ベストオブ長編。まだ読んでない方は、ぜひ読んで頂きたいです。

さいごに

世の中がどれだけ変わっても、本と書店と図書館だけはあり続けて欲しい。さらに、大体の図書館はバリアフリーですが、書店もそうなってくれたらずっといいですよね。紙の本と電子書籍は共存していってくれ。子どもが、お小遣いで新しい本を買った時のワクワクを感じてくれるようになったら、正直言って嬉しい。ですが、本を読む自由、読まない自由の中で、なにか趣味を見つけてくれるだけで何よりです。なんて言いつつエイミーと、おせいさんはゴリ押ししちゃうだろうけど!(結局何の話し?)